| いのちの鼓動を感じるところ 「 人間って やっぱり 面白い! 」 「つながるキャンプ」リーダー研修 講師 石黒 敬子 (財団法人 日本ダウン症協会理事) 「障害を持った子どもたちと一緒にキャンプをするので、リーダー研修の講師を。」と依頼され、上味見の「自然体験共学センター」を訪れるようになって二度目の夏が過ぎました。アウトドア行事には数えるほどしか参加したことのない私です。当初、はたして務まるのかしらと心配したものですが、障害者観を主にお話するということでお引き受けしました。 最初に上味見を訪れた時、深い緑と夜の漆黒に、自然への畏怖と、その懐に包まれる安堵を感じ、何をお話しようかという不安を忘れました。"もののけ"も含め、あたりに満ちている生とし生けるもののいのちの鼓動に、自分のいのちが感応し始めるのがわかるのです。なぜ人は自然の中で元気になるのか? 林道を歩けば、木々の緑が粒子となって溶け出し、体の中に入り込んでくるようです。人間が自然の一部であることをしっかり思い出させてくれる。「自然体験共学センター」は、私にはそういう場所になりました。 研修会の前夜は、他の講師の方や、スタッフの方々との交流の時間が持たれます。多少アルコールが入ることもありますが、結構熱が入って生半可では終わらない場面もあります。ここは、どうも上っ面で生きていけるような場所ではないようです。講師陣も無茶苦茶個性的。大勢のボランティア陣を配し、まるでバケツリレーのように障害者を車椅子のまま県の最高峰に登山させてしまう矢野さん。この方は今夏、ボランティアの学生さんが作ったツリーハウスの模型を、センターの裏山に本当に作ってしまった人でもあります。「家で移動するのは一日10メートルくらいなので、ダルマと呼ばれています。」とおっしゃるのは、私と同じダウン症の子の親である永吉さん。障害者の親が、一日10メートルしか動かないでいられるはずはどう考えてもないのだけれど、この方のお話を聞いていると本当のような気がしてくるから不思議。永吉さんの型破りな学生時代の話には涙が出るほど笑いました。(この話が聞きたい方は、リーダー研修に参加してみてくださいね) そんな、愉快で真剣な研修日の前夜を過ごし、研修会当日は、そこに集うボランティア リーダーの学生さんや若い方々に、それぞれのいわば生きざまを曝け出してしまう事になるわけですが、耳を傾けて下さるボランティアリーダーの方々も、講師陣に負けず劣らず個性的です。「つながるキャンプ」にリピーターとして参加している自閉症を持つN君を担当して、一緒にキャンプを過ごす学生さんは、子どもへの洞察力に優れた青年です。 自閉症によく見られる"こだわり"を持つN君は、眠る時必ず決まった人形が必要だったけれど、今年は持たなくて寝付いたこと、他者とかかわることの苦手な彼が「皆は?」と言葉に出して友達を意識したことを報告してくれました。それを、素敵なこと楽しいことと感じて、笑顔で語る彼の感性が私にはとても嬉しかった! 一昨年、この自閉症を持つN君には私も会っていて、彼を囲む子どもたちに感動したことをよく覚えています。その日は「自然の中の材料で自分の音を作ろう」という活動でした。N君は水へのこだわりもあります。グラウンドでは、ホースからひいた水を溝に流しながら、石を積んだり小枝を渡したりと自分の遊びに夢中です。音の出そうな材料探しに皆がグラウンドに散ろうとしていた時です。仲間の男の子がホースの水音に気付き、「N君の音だ!」と言ったのです。そして、石を地面に落として、音を一緒に楽しもうとしていました。子どもってホントにすごいな〜! 同じことをするのを「集団」と捕らえるか、一人一人違った子が集まっていることを「集団」と捕らえるか、「集団」の考え方で、そこに集う人の在り方は大きく違ってきます。 "障害"があってもなくても、子どもたちは一人一人それぞれ十分に個性的です。違って当たり前、違う人たちが集まるから面白い。自然共学センターでは、手間ひまかかっても、やりたいことや分担を、子どもたちが自分で決めていくスタイルがとられていました。子どもたちを守り育もうとするスタッフの大変さを横目に、時たま来訪する"講師"は、子どもたちの駆け回る姿に、つい笑みを浮かべ、静かにたたずむ姿に、ずっと耳を傾けていたくなります。 「自然体験共学センター」に集う、面白い大人や子どもたち。自然という大きないのちのざわめきをフィールドに、さまざまなスタイルで自己主張し、他者の中でせめぎ合い愛おしもうとする個のいのち。 「自然体験共学センター」のホームページの写真のコマからは、そんな、いのちの鼓動が聞こえてくるようです。 (広島市在住) |
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